なぜ、苦労して身につけたレタッチスキルを公開するのか?

多くの方は、長い年月をかけて磨き上げたスキルや知識を、自分だけの「武器」として大切に保持し、他人に教えることに抵抗を感じるものです。
自分だけの秘伝と考え、他者に知られたくないというのはごく自然な感情だと思います。
しかし、僕はその技術を講座という形で公開しています。
なぜなら、技術や知識を独り占めにしてしまうと、自分自身の成長をはばむ可能性があると考えているからです。
技術は誰でも習得できるけれど、個性は真似できない

レタッチの上達には、スキル、経験、知識といった要素が求められまが、これらは努力次第で誰でも習得できるものです。
もしかすると「自分が苦労して得た技術」が他者に真似された場合、ライバルが増え、自分の強みが薄れてしまうのではと不安に思うかもしれません。
しかし、長年の経験から感じるのは、同じ写真を同じ技術や知識で同じ工程でレタッチをしたとしても人それぞれ仕上がりに違いがでてまったく同じになるということがほとんどありません。
どんなに基礎技術が似通っていても、作業中に生まれる微妙な違いこそが各レタッチャーの「感性」であり、その人固有の「個性」を表しているということです。
僕が考えるレタッチャーに最も必要なのは、単に真似されない技術そのものではなく、真似できない「個性」にあります。
つまり、技術や知識は誰でも身につけることができるものですが、その技術をどのように使い、どんな感性で表現するかは、一人ひとり違いが出てきます。
たとえば、誰でも同じレシピを使えるとしても、シェフごとに味のバランスや盛り付けに個性が出るように、レタッチにも必ず唯一無二の表現が現れるものです。
ライバルが増えたとしても、その個性は決してコピーできるものではありません。
だからこそ、僕自身は技術を隠して守る必要もなく、むしろ公開することで多くの人と切磋琢磨し、互いに成長できる環境を作りたいと考えています。
技術の共有が生む自己成長の相乗効果

僕自身、レタッチ技術を習得するために数多くの模倣や試行錯誤を重ね、失敗や成功を通して自分だけのスタイルを確立してきました。
最初は、この貴重なノウハウを内密にしておこうという気持ちもあったけれど、ある時ふと思いました。
自分だけの宝物として閉じ込めておくよりも、講座という形で他の人と共有することで、互いに刺激を受け、成長できる環境が生まれるのではないかと。
たとえば、料理人が自分のレシピをオープンにして意見交換することで、より美味しい料理が生み出されるように、技術や知識を公開することで新たな発見や気づきが生まれます。
アウトプットする過程で自分の考えを体系化でき、また客観的なフィードバックを受けることは、常に自分の改善点を見直す大切な機会でもあります。
結果として、自分自身も新たな技術や表現方法に挑戦する原動力となっています。
業界内の孤立を打破する情報共有の大切さ
正直なところ、レタッチ業界(ナイトワーク業界)では、同じ職種の人たちが情報交換をする機会がひじょうに少なく、他店のレタッチャーがどんな技法や考え方を持っているかを知るのは難しい状況です。
そういった中で各自が独自のやり方に固執してしまうと、新しい技術への挑戦や視野の拡大が困難になります。サッカーで例えるなら、選手が個人練習ばかりに偏り、チーム全体の戦術や連携を失ってしまうようなものです。
逆に、互いに技術や知見を共有し合う環境では、それぞれの違いが明確になり、個々の強みが洗い出されます。
僕は、仲間同士が意見交換し、切磋琢磨できる環境を講座やワークショップをとおし、U-Expaceのようなコミュニティ―がレベルアップに欠かせないと確信しています。
AIの進化と人間の感性の共存

現代は、AIの急速な進化によりレタッチ作業の一部が自動化され、処理時間が劇的に短縮される時代です。かつては一枚の画像を丁寧に仕上げるために時間もかけていた作業が、今ではAIによって数分で終わってしまうこともあります。
しかし、AIは大量のデータを基に効率的に処理を行うことは得意ですが、微妙なニュアンスや細かい感性に基づく仕上げにおいては、どうしても人間の手作業が必要となります。
このような時代の変化に対して、僕たちレタッチャーが直面する課題は、単に技術を守るか否かという問題ではありません。
重要なのは「自動化できる部分」と「人間の手作業が必要な部分」との境界です。
AIが得意とする作業と人間が持つ繊細な技術との間で、どのように最適なバランスを見出し、付加価値を創出するかが重要なのではないでしょうか。
自動化によって効率化が図られる一方で、その時間短縮の恩恵を活かし、より高度なクリエイティブな表現や、個々の感性に基づく手作業をさらに磨いていく必要があります。
工場の自動化が進む中で、熟練の職人が最後の仕上げを担うように、今後レタッチにおいてもAIがベースとなる作業を行い、最終的な微調整を人間が担当するという役割分担が今後一般的になるでしょう。
先述でもありますが、僕はAIによって代替可能なスキルよりも、真似できない個性や感性にこそ価値があると考えています。
そのため、技術を公開することやAIの代替えスキルに対して危機感を抱く必要はなく、むしろ他者に自分の技術や感性を見てもらうことで、客観的なフィードバックを得て自分の表現力をさらに磨いていける、AIよって短縮された時間の活用のチャンスと捉えています。
共有とアウトプットの力

僕がレタッチスキルを講座として公開する理由は、単に「技術を広めたい」という気持ちだけではなく、業界全体の発展と自身の成長を促すためです。
技術や知識を一人で抱え込むよりも、オープンな環境で情報交換を行うことで、新たな可能性やアイデアが次々と生まれます。
実際、他のクリエイターとの交流やコラボレーションは、自分一人では到底思いつかない発想を引き出し、作品に深みや独自性を加える効果があります。
また、技術を「蓄える」だけでなく、それを「アウトプット」することで初めて新たな発見が生まれます。何かを教えるという行為は、自分自身の知識を体系化し、再確認する良い機会となります。
アウトプットを続けることで、自分の中の「強み」と「弱点」を客観的に見つめ直す機会が増え、次なるステップへの明確な指針を得ることができます。
たとえば、講座で「こんな部分をもっと詳しく知りたい」という受講者のフィードバックを受けることで、逆に自分自身がその部分を再検討し、さらなる技術向上につなげることができるのです。
こうした環境を「U-Expace」というコミュニティを通じて、僕たちは互いに学び合い、感性を刺激し合うことで、新たな表現の可能性を切り開いていけます。
まとめ:共に学び、共に成長する未来へ
レタッチに必要なのは、誰でも手に入る技術や知識だけではなく、それをどう使い、どのように表現するかという「個性」だと思います。
僕は、苦労して得たレタッチスキルを講座という形で公開することで、ライバルが増えるどころか、むしろ仲間との切磋琢磨を通じて自分自身も新たな発見や成長の機会を得られると考えています。
AIの登場によって、従来の技術の一部は自動化されるかもしれませんが、人間の感性や細部にこだわる技術は、これからも確固たる価値を持ち続けます。
僕たちレタッチャーが未来に向けて成長し続けるためには、オープンな情報共有と互いの学び合いが欠かせません。
どんなに同じ工程や技術を経ても、そこから生まれる唯一無二の表現は、それぞれの感性に根ざしたものです。
だからこそ、僕は自分の技術を隠すのではなく、講座やコミュニティを通じてどんどん公開していくつもりです。
みんなで互いに学び合い、刺激し合えば、業界全体が活性化し、僕たち一人ひとりがより高度なクリエイティブな作品を生み出していけると信じています。
未来のレタッチャーたちが、単なる作業者ではなく、独自の視点と感性を持った真のクリエイターとして輝いていくために、これからも僕たちは共に成長し続けるべきだと思います。
PS:最後に告知のお許しを!
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